社労士試験 合格基準について
令和8年(第58回)社労士試験の結果と総括
令和8年(第58回)社会保険労務士試験はさる8月23日(日)、全国主要19都道府県の会場で行われましたが、その結果が、10月1日(木)に官報及び全国社会保険労務士会連合会の社労士試験センターホームページ上で発表されました。
その実施概況は、以下のとおりです。
実施概況
| 項目 |
令和8年結果 |
対前年比 |
令和7年 |
| 受験申込者数 |
52,842人 |
-776人 |
53,618人 |
| 受験者数 |
42,510人 |
-911人 |
43,421人 |
| 受験率 |
80.4% |
-0.6ポイント |
81.0% |
| 合格者数 |
3,961人 |
+1,585人 |
2,376人 |
| 合格率 |
9.3% |
+3.8ポイント |
5.5% |
合格基準点
(1)合格基準
本年度の合格基準は、次の2つの条件を満たしたものを合格とする。
�@ 選択式試験は、総得点25点以上かつ各科目3点以上である者
(ただし、雇用保険法は2点以上)
�A 択一式試験は、総得点47点以上かつ各科目4点以上である者
※上記合格基準は、試験の難易度に差が生じたことから、昨年度試験の合格基準を補正したものである。
(2)配点
�@ 選択式試験は、各問1点とし、1科目5点満点、合計40点満点とする。
�A 択一式試験は、各問1点とし、1科目10点満点、合計70点満点とする。
総評
(1)令和8年試験(第58回)の合格率は、「9.3%」(前年から3.8ポイント上昇)
社会保険労務士試験(以下、「社労士試験」)の合格率は、平成20年(第40回)から平成26年(第46回)の試験まで、
1桁台の後半(5.4%〜9.3%)で推移していましたが、平成27年(第47回)に試験史上最低で、初めて5%を切る「2.6%」を記録しました。
さらに、翌年の平成28年(第48回)も平成27年に次ぐ史上2番目に低い「4.4%」にとどまったことから、社労士試験は、5%を下回る「低合格率時代」に入ったものとみられていました。
しかし、平成29年(第49回)の試験では、「6.8%」と3年ぶりに「5%」を大きく超え、続く平成30年(第50回)(6.3%)、令和元年(第51回)(6.6%)、令和2年(第52回)(6.4%)と4年連続6%台を記録しました。
令和3年(第53回)の合格率はさらに上昇し、平成20年(第40回)以降では、平成26年の「9.3%」に次ぐ、2番目に高い「7.9%」を記録しています。
令和4年(第54回)の試験では、「5.3%」と6年ぶりに6%を下回る低合格率となりましたが、令和5年(第55回)及び令和6年(第56回)の試験の合格率は、それぞれ「6.4%」、「6.9%」と6%台に復活しています。
昨年の令和7年(第57回)試験の合格率は、「5.5%」と発表され、平成29年(第49回)の試験以降では、令和4年(第54回)の「5.3%」に次ぐ「低合格率」となりました。
このように、「合格率」の推移をみると、平成29年(第49回)以降、令和7年(第57回)まで、令和3年(第53回)の「7.9%」を除き、「5%台」又は「6%台」を記録しています。
このため、今回の第58回試験においても、「5%台」又は「6%台」となる可能性が高いものと予想されましたが、今回の令和8年(第58回)試験の合格率は、前年を3.8ポイントも上回る「9.3%」と発表されました。
過去の試験における「合格率」をみると、「数年に1度」の頻度で、極端な「低合格率」及び「高合格率」を記録する年があり、今回の「高合格率」も一過性のものと考えると、
今回の結果で「高合格率時代の到来」と考えるのは早計で、来年の第59回の試験では、やはり「5%台」又は「6%台」に戻る可能性が高いものと考えるのが妥当であるようです。
今回の試験における合格者数は、「3,961人」で、前年の「2,376人」と比べ「1,585人」も増加しています。今回の受験者数(42,510人)は、前年(43,421人)と比べ911人減少しているにもかかわらず、
合格者数が1,500人以上増加した「最大」というよりも「唯一」の要因は、今回の合格率(9.3%)が前年(5.5%)と比較して3.8ポイント上昇したことにあります。
なお、合格者数の推移をみると、平成26年以前の10年間の平均の合格者数の約4,000人と比較すると、昨年の試験では、1,600人程度減少しており、
これは、社労士の受験者数がピーク時(平成22年・55,445人)と比較して、1万2,000人程度減少していることが要因です。
今回の試験で、受験者数は、昨年より1,000人弱減少したにもかかわらず、合格者数が平成26年以前のピーク時に匹敵する3,961人であったのは、前述のように、合格率の大幅な上昇が要因となっています。
(2)択一式試験の合格基準点は、前年を5点上回る「47点」
今回の択一式試験の全受験者の平均点(試験センター発表。以下、同じ。)は、「33.6点」で、前年(28.4点)よりも「5.2点」も上回っているます。
前年の択一式試験では、各科目について、「難問」が多く出題され、全体的な問題のレベルは、直近の10年間の試験の中でも、最も難度が高かったものと考えられ、択一式の合格基準点も「42点」と最も低いものでした。
今回の択一式の問題のレベルは、難度が昨年よりも大幅に低下したことから、合格基準点は「47点」で、逆に過去10年間で最も高くなったものです。
今回の択一式「合格基準点」の「47点」は、前述の今回の択一式試験の全受験者の平均点と前年度の全受験者の平均点との差の約「5点」が、昨年の「合格基準点」の「42点」に上乗せされたもので、理由もなく引き上げられたものではありません。
「47点」は、過去の実績からも、かなりハイレベルの「合格基準点」で、「47点」まで引上げても、なお、「高合格率」を記録したことは、今回の択一式の問題のレベルが、例年に比べ1ランク低かったことの証左と言えるかもしれません。
ちなみに、直近の6年間の「択一式の合格基準点」と、「全受験者の択一式の平均点」を比較すると、令和3年(32.3点(全受験者の択一式の平均点。以下同じ)→45点(合格基準点。以下同じ))、令和4年(30.9点→44点)、令和5年(31.8点→45点)、
令和6年(30.6点→44点)、令和7年(28.4点→42点)、令和8年(33.6点→47点)となっており、「択一式の合格基準点」は、「全受験者の択一式の平均点」に比例していることがわかります。
このため、令和9年の択一式の「合格基準点」についても、当然のことながら、問題の難易度(受験者の平均点)に比例して決定されるものと考えられ、「○○点以上取れば、安全圏」という基準を想定することは難しいようです。
(3)選択式試験は「雇用保険法」で「2点」の救済措置
選択式試験の合格基準については、原則として、各科目「3点以上」を合格点としています(総合得点についても、合格基準点が設定されていますが、科目別の合格基準点をクリアした受験者が総合得点で合格基準点を下回ることはほとんどありません。)が、
「3点以上」の得点者の割合が低かった科目については、「2点」(さらに「2点以上」の得点者の割合が低かった科目については、「1点」)の得点の科目を合格点として救済しています。
今回の選択式試験の問題の総合得点の平均点は、「23.5点」で、令和7年の「20.3点」を「3.2点」上回りました。昨年の選択式試験の総合点の「合格基準点」は、「22点」でしたが、
今回は、これを「3点」上回る「25点」で決定されたのは、択一式の「合格基準点」と同様、選択式試験の全受験者の平均点と前年度の全受験者の平均点との差の約「3点」が、
昨年の「合格基準点」の「22点」に上乗せされたものと考えられます。
また、科目別の「合格基準点(「2点」又は「1点」の救済がある科目が何科目あるか)」については、令和3年まで、毎年、複数科目で行われていた「2点(1点)」の救済措置の対象となった科目が、
令和4年及び令和5年の試験では、1科目もなく、科目別の「合格基準点」は、『各科目「3点以上」あること』が「絶対基準」となった可能性が考えられました。
その後、令和6年に「1科目」、令和7年に「3科目」がそれぞれ「2点」の救済対象となりましたが、令和4年から、令和7年までの選択式の問題レベルと、今回の選択式の問題レベルとの比較から、
今回の試験では、「令和4年及び令和5年」に準じ、「2点」の救済措置が実施されないことが予想されました。
結果として、今回の試験では「雇用保険法」の1科目ついてのみ「2点」の救済が行われました。
発表された「雇用保険法」の受験者の平均点は、「2.1点」と極端に低く、「3点以上の得点者の割合」も「34.1%」しかなく、「2点」の救済が行われたことも妥当な措置であったといえます。
ちなみに、「雇用保険法」の選択式で「2点」の救済措置が取られていなかったと仮定すると、今回の「9.3%」という「合格率」は2〜3ポイントほど下がり、「6〜7%台」となった可能性が考えられます。
前述のように、令和4年及び令和5年の2年間においては、科目別の「2点」の救済措置を1科目も認めなかったように、今回の「雇用保険法」の「2点」の救済は、
あくまでも「極端に「3点以上の得点者の割合が低かった」ことによる特例」による措置と考え、令和9年度の受験者の方には、「2点の救済は行われない」ことを前提とした「選択式対策」が必要です。
(4)第58回社会保険労務士試験の総括
今回の試験について、�@「合格率」、�A「択一式の合格基準点」、�B「選択式の「2点」の救済の対象となった問題数」等を、
直近の5年間の試験と比較し、令和9年の試験についての�@〜�Bを予想すると以下のとおりです。
�@の合格率については、今回、過去10年間で最も高い「9.3%」となりましたが、「高合格率」が2年続くことはまれあることから、
令和9年度の試験で「8〜9%台」の高い合格率は期待できず、受験者の方には、やはり「5〜6%台」の合格率を想定した受験対策をお勧めします。
また、「合格率」については、択一式及び選択式の「合格基準点」によって左右される(択一式の「合格基準点」のわずか1点の差、選択式の2点の救済措置の対象となる科目数の1科目の差によって、合格率も大きく上下します)ため、
合格率を予想することは至難であることからも、令和9年度の受験対策を進めるに当たっては、「合格率」を想定するのではなく、比較的、狭い範囲の得点の中で推移する「合格基準点」をクリアするための学習に徹することが必要です。
�Aの択一式の合格基準点については、前記(2)の項で述べたように、その年の受験者の平均得点に比例した得点で決定されていますので、
令和9年試験の「合格基準点」は、その年の「問題のレベル」に左右される要素が大きく、現時点で予想することは困難ですが、
過去における「合格基準点」の平均点よりも1〜2点高い「45〜47点」程度の得点を目標に択一式対策を行うことが妥当であるようです。
�Bの選択式の「2点(1点)」の救済措置の可能性についても、択一式試験と同様、試験問題のレベルにより救済の対象科目が変わります。
前記(3)の項で述べたように、今回の試験の「雇用保険法」で「2点」の救済措置が行われたことは、あくまでも「例外」と考え、令和9年試験の選択式対策を行うにあたっては、「2点の救済は行われない」ことを前提とした「3点以上の絶対確保」を目標としたいところです。
平成12年以降の社労士試験の実施状況
※現行の「選択式試験」が採用された平成12年以降の社労士試験の実施状況について掲示しています。
| 年 |
択一式試験 |
選択式試験 |
合格率 |
総合・ 合格 基準点 |
科目別必要最低得点 |
難易度 |
総合・ 合格 基準点 |
科目別必要最低得点 |
難易度 |
| 8年 |
47点 |
4点 |
C |
25点 |
3点 (「雇用」→2点) |
B |
9.3% |
| 7年 |
42点 |
4点 (「雇用」→3点) |
A |
22点 |
3点 (「労災」・「労一」・「社一」2点) |
A |
5.5 |
| 6年 |
44点 |
4点 |
A |
25点 |
3点 (「労一」→2点) |
B |
6.9% |
| 5年 |
45点 |
4点 |
B |
26点 |
3点 |
B |
6.4% |
| 4年 |
44点 |
4点 |
A |
27点 |
3点 |
C |
5.3% |
| 3年 |
45点 |
4点 |
B |
24点 |
3点 (「労一」→1点・「国年」→2点) |
A |
7.9% |
| 2年 |
44点 |
4点 |
B |
25点 |
3点 (「労一」・「社一」・「健保」→2点) |
A |
6.4% |
| 元年 |
43点 |
4点 |
A |
26点 |
3点 (「社一」→2点) |
C |
6.6% |
| 30年 |
45点 |
4点 |
B |
23点 |
3点 (「社一」・「国年」→2点) |
B |
6.3% |
| 29年 |
45点 |
4点 (「厚年」→3点) |
B |
24点 |
3点 (「雇用」・「健保」→2点) |
B |
6.8% |
| 28年 |
42点 |
4点 (「常識」・「厚年」・「国年」 →3点) |
A |
23点 |
3点 (「労常」・「健保」→2点) |
A |
4.4% |
| 27年 |
45点 |
4点 |
A |
21点 |
3点 (「労常」・「社常」・「健保」・ 「厚年」→2点) |
A |
2.6% |
| 26年 |
45点 |
4点 (「常識」→3点) |
B |
26点 |
3点 (「雇用」・「健保」→2点) |
C |
9.3% |
| 25年 |
46点 |
4点 |
B |
21点 |
3点 (「社常」→1点 「労災」・「雇用」・「健保」→2点) |
A |
5.4% |
| 24年 |
46点 |
4点 |
B |
26点 |
3点 (「厚年」→2点) |
B |
7.0% |
| 23年 |
46点 |
4点 |
B |
23点 |
3点 (「労基・安衛」・「労災」・「社常」・「厚年」・「国年」→2点) |
A |
7.2% |
| 22年 |
48点 |
4点 |
B (注) |
23点 |
3点 (「国年」→1点 「健保」・「厚年」・「社常」→2点) |
A |
8.6% |
| 21年 |
44点 |
4点 |
B |
25点 |
3点 (「労基・安衛」・「労災」・「厚年」→2点) |
B |
7.6% |
| 20年 |
48点 |
4点 |
C |
25点 |
3点 (「健保」→1点 「厚年」・「国年」→2点) |
A |
7.5% |
| 19年 |
44点 |
4点 |
B |
28点 |
3点 |
C |
10.6% |
| 18年 |
41点 |
4点 (「労基・安衛」・「常識」→3点) |
A |
22点 |
3点 (「労基・安衛」・「労災」・「社常」・「厚年」→2点) |
A |
8.5% |
| 17年 |
43点 |
4点 |
B |
28点 |
3点 (「労基・安衛」→2点) |
B |
8.9% |
| 16年 |
42点 |
4点 (「健保」・「厚年」・「国年」→3点) |
A |
27点 |
3点 (「健保」→1点) |
B |
9.4% |
| 15年 |
44点 |
4点 (「労基・安衛」・「厚年」→3点) |
B |
28点 |
3点 (「労常」・「社労」・「厚年」・「国年」→2点) |
A |
9.2% |
| 14年 |
44点 |
4点 |
B |
28点 |
3点 (「労基・安衛」→2点) |
B |
9.3% |
| 13年 |
45点 |
4点 (「常識」→3点) |
B |
26点 |
3点 (「労基・安衛」・「厚年」・「国年」→2点) |
A |
8.7% |
| 12年 |
49点 |
4点 |
C |
28点 |
3点 |
C |
8.6% |
(注)
1.「難易度」(A→難度が高い、B→普通、C→難度が低い)は、各年度において受験者から寄せられた復元解答の得点状況及び試験センター発表の「社会保険労務士試験得点状況」による。
2.「択一式」は70点満点(1科目10点満点)、「選択式」は40点満点(1科目5点満点)。
3.平成22年の択一式試験の難易度は「B」であったが、この年は出題ミスが5問あり、受験者に有利な採点が行われたため、問題レベルと比較して、「合格基準点」が高くなった。