労働・社会保険制度間の横断的整理
死亡給付に係る遺族の範囲
- 横断的理解のコツ
- 労災保険法の遺族(補償)年金、厚生年金保険法の遺族厚生年金、国民年金法の遺族基礎年金の受給権者(受給資格者)となるためには、いずれも、死亡者との間に「生計維持関係」があったことが必要である。
- 遺族(補償)年金の受給権者(受給資格者)の範囲は、「配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹」であるが、これと比較し、遺族厚生年金は「兄弟姉妹」が、遺族基礎年金は「夫・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹」が、それぞれ受給権者となる遺族の範囲に含まれていないことに注意。
- 受給権者である「子」等が「18歳に達する日以後の最初の3月31日」で失権しない「障害要件」について
労災保険法の「遺族(補償)年金」は、
- ①障害等級が「5等級」以上であること 及び
- ②労働者の死亡の当時から引続き障害の状態にあること、とされている。
これに対し、国民年金法の「障害基礎年金」及び厚生年金保険法の「障害厚生年金」については、
- ①障害等級が「2等級」以上であること 及び
- ②被保険者等の死亡の当時は障害の状態になくても、18歳以後の3月31日までの間に障害の状態になれば、20歳に達するまでは失権しないこと、とされている。
(※)配・・・配偶者 父・・・父母 祖・・・祖父母 兄・・・兄弟姉妹
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保険給付 |
遺族の範囲 |
労災保険法 |
遺族(補償)年金 |
○生計を維持していた配・子・父・孫・祖・兄(※)
- ① 妻
- ② 夫・父・祖 → 60歳以上又は障害等級5級以上
- ③ 子・孫 → 18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるか又は障害等級5級以上
- ④ 兄 → 18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるか、60歳以上又は障害等級5級以上
- ※夫・父・祖・兄は、55歳以上60歳未満も可(若年支給停止)
※転給の制度あり
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遺族(補償)一時金 |
- ① 配
- ② 生計を維持していた子・父・孫・祖
- ③ ②以外の子・父・孫・祖
- ④ 兄
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障害(補償)年金 差額一時金 |
- ① 生計を同じくしていた配・子・父・孫・祖・兄
- ② ①に該当しない配・子・父・孫・祖・兄
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厚生年金保険法 |
遺族厚生年金 |
○生計を維持していた配・子・父・孫・祖
- ① 妻
- ② 夫・父・祖→55歳以上
- ③ 子・孫→18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるか、又は20歳未満で1・2級の障害の状態にあり、現に婚姻をしていないもの
- ※受給順位は㋑配・子、㋺父、㋩孫、㋥祖の順で、受給権者となるのは、そのうち最先順位者のみ(転給の制度なし)
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国民年金法 |
遺族基礎年金 |
○生計を維持していた「子のある妻」・「子」
- ① ②の子と生計を同じくしている妻
- ② 18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるか、又は20歳未満で1・2級の障害の状態にある子であって、現に婚姻していないもの
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寡婦年金 |
○死亡した夫によって生計を維持し、夫との婚姻関係(内縁関係を含む。)が10年以上継続した65歳未満の妻
- ※60歳未満の妻に対する支給は、60歳に達した日の属する月の翌月から開始
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死亡一時金 |
○生計を同じくしていた配・子・父・孫・祖・兄 |
健康保険法「出産手当金」に関する問題
被保険者が出産予定日以前42日より無給の出産休暇をとったところ、出産予定日から5日遅れて一児を出産した。被保険者は出産日後も60日間、無給の出産休暇をとったが、この場合において被保険者が受給することができる出産手当金の支給日数は、98日間である。
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解答:×
設例の場合、出産手当金は「出産の予定日以前42日から出産日後56日」まで支給されるため、支給日数は、次の計算により「103日」となる(健康保険法第102条)。
- 42日(出産の予定日以前42日から出産予定日まで)+5日(出産予定日の翌日から出産日まで)+56日(出産日の翌日から56日)=103日